静まり返った大広間に、大きな注目を浴びていたことを再認識します。


少しして顔を上げた王子様は覚悟を決めたように凛々しく王様を見つめていました。

守るようにして出されていた腕が引っ込められ、少女は全てを悟ります。


「分かりました。」


王様に対して深く頭を垂れた王子様は、視線は向けないまま、少女に対してたったひとことを伝えました。


「ここまでのようだ。巻き込んですまなかった。」


さらさらと、夢の時間が崩れていく音が聞こえた気さえしました。

現実味のない、ほんの一瞬の出来事です。


少女が、やっとの思いで心を開き、信じた王子様は、

そんなたった一言で離れていってしまいました。


「ふん、賢い判断だ。行こう、婚約発表だ」


煌びやかな服の裾を翻し、

王様は立ち尽くす少女を無視して広間の中央へと足を進めます。


それに、従順についていく王子様を少女は見ることはできませんでした。


去っていく王子様は、すれ違いざま、少女にだけ聞こえる声でそっと一言、囁きました。


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