「その娘は誰だ?」


その声が、悲劇のはじまりでした。


突然厳しそうな低い声が響き、少女は肩を震わせます。

振り返るとそこには明らかに周りとは違う高貴な服装をした男性が立っていました。


「父上。今日は父上に合わせたく、こちらの女性を連れてきました。」


礼儀正しく向き合う王子様に、一度は恐怖で震えた心臓が落ち着きを取り戻します。


しかし、父上と呼ばれたこの国の王様は、

ニコリともしないまま、冷たい瞳で私を一瞥し王子様に言葉を突き刺しました。


「ネズミを飼っているという噂は本当だったのか。

本当にお前はバカ息子だ。自分が何を言っているのか分かっているのか。」


家族に対してとは思えない、厳しく冷たい物言いに、少女は息を飲みます。

これもまた、家族や町人に愛されて育ってきた少女には、知らない世界でした。


「分かっています。しかし、父上に理解していただきたいのです。私はこちらの女性と…。」


果敢に言葉を紡ぐ王子様でしたが、

結局言葉が王様に届くことはなく、王様は言葉を重ねました。