「十分に伝えたつもりだったけどな」


王子様は困ったように笑い、少女の前に跪きました。


「俺は助けたいという気持ちだけでここまでするほどできた人間じゃない。

ただ、お前のことが愛しくて大切なだけだ。」


王子様の言葉は真っ直ぐでした。

じっと見つめられ、透き通った美しい瞳に目を奪われます。


「…私には信じることは難しいです。

身分も、私自身も、王子様に気に入られるようなことは何も…」


それでも少女は、自分の身分を忘れませんでした。


謙虚に、慎ましく、ここまで生きてきた。

そんな彼女は、王子様の愛を素直に受け取ることは難しかったのです。


王子様は、困ったように頭を垂れました。


「どうしたら信じてくれるというのだ。

もっと自信を持っていい。

お前の、周りを大切にする温かい行動や芯の通った性格は本当に素敵なんだ。

それだけで、一国の王子の心を、魅了してしまう程な」


顔を上げた王子様に、少女は、驚いて目を見開きました。

その表情は、恥ずかしそうに頬が染まり、いつもの余裕のある王子様とはまるっきり違うものだったのです。