引っ越しがある程度落ち着いたある日、

王子様からのお誘いを受けた少女は、

家の周りに広がる、王家の広大な庭の一部を散歩に出ていました。


「王子様は、どうしてこんなにも私達に親切にしてくださるのですか?」


少し前を歩く王子様に、少女は思わず尋ねます。


町で、酷い扱いを受けていたのを見かねて救いの手を伸ばしてくれた王子様。

それは、凄く温かく、嬉しい事だったけど、

やっぱりどう考えても、不自然であり得ないことでした。


王子様は、少女の質問に対して振り返り優しく笑いました。


「…理由が必要か?俺が、お前を大切に思っていることは伝わっているだろう?」


恥ずかしげもなく微笑む王子様に、

少女は、自分の身分と王子様の身分を考え、困惑しました。


「大切に…、とは言っても。その理由が分からないのです。

どうして、貧しい町人の私をそのように大切にしてくださるのでしょう」


少女は困ったように首をかしげました。