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私が、王子様に失礼な言葉を放った日から、王子様は一度も姿を見せません。

きっと、退屈な毎日の中で見つけた暇つぶしだったんだろう。

飽きてくれてよかった。


平穏な日常を取り戻した少女は町へ出ました。

今日食べる野菜を収穫して、お塩がきれていたから買いに行って…。

わくわくして出かけた少女は、町で暮らす温かかった住民たちの冷たい視線に気付いていませんでした。


「…っ、痛いっ!」


野菜を収穫しようと座り込んだ時、突然背中に固いものが当たり、少女は顔を歪めます。

振り返ると近所の二人組の男の子がいました。

少女に良く懐いていて、いつも一緒に遊んでいた男の子でした。


「…どうしたの?」


ぶつけられた背中の痛みを隠すように微笑み、

声を掛けると鋭い目で睨まれて少女は驚きます。


「皆言ってた。王子様に媚びを売ったんだって。

皆で協力して慎ましく生きようだなんて言いながら、自分だけ出し抜こうだなんて、

卑怯だ!裏切り者だ!」


「そうだそうだ、裏切り者だ!」


予想だにもしない冷たい言葉に少女は、言葉を失いました。


何も言えず、ギュッと掴まれたように痛む胸を押さえ、立ち尽くします。

そんな少女に向かって男の子たちは力いっぱい石を投げつけました。


「い、痛いよっやめて!!」


その痛みに、やっとの思いで足を動かし、自宅へと逃げ込んだ少女。


帰り道では、行きに気付かなかった、近所の大人たちからの冷たい視線を浴びて、少女は泣きたい気持ちでした。


扉を閉めて、少女は、悲しみからその場でしゃがみ込んでしまいました。


「…大丈夫か?」


心配して玄関まで出てきたおばあちゃんの優しい声に、少女は涙をのみ込み、ぎゅっと口角を上げます。


「大丈夫、それよりおばあちゃんは何もされてない?

ごめんね、私気付いてなかったの。お母さんは?」


「大丈夫だよ。本当に優しい子。私の子だなんて、嘘みたい…絶対、幸せになれるからね」


ギュッと抱きしめてくれたお母さんを、おばあちゃんが抱きしめ、家族三人で抱きしめ合う。


少女は、そのぬくもりの中で、一筋だけ涙をこぼしました。