「じゃーな!」「うん!」「また明日ね」

楽しそうな挨拶が聞こえ、皇輝が教室から出てくる。


私は慌てて開いた扉に背中を向けるけど、やっぱり彼は聞いていたことに気付いていたみたいで、小声で話しかけられた。


「悪気はないんだと思うから。ごめんな」

「…なんで、謝るの?皇輝だっていろいろ言われてたじゃん」

「俺は、気にしないから」


優しく笑う彼に、私は困ってしまって眉を下げる。


どうしてこんな時に優しい事言うんだろう。

普段はあんなに空気読めないのに…。

欲しいときだけ、助けてくれるんだろう。


「なあ、一緒に帰ろう。待ってたんだ」

「……いいよ」


何となく、承諾してしまったのは、周りに誰もいなかったからか、ただの気の迷いか。

それとも、彼の素敵な心を垣間見てしまったからなのか。


私は静かに頷き、皇輝は嬉しそうに笑って先を歩いた。