その日聞いた不穏な噂は、日に日に大きく囁かれるようになった。


「妃花ちゃん調子乗ってるんじゃない?」

「皇輝に好かれたからって、妃花は変わんないのにね」

「不釣り合いだよね」


初めは、陰で囁かれていた言葉も、気付けば私のいる教室でも言われるようになり。

気付かないふりをして笑う日々は、私にとって苦しい時間だった。


意味もなく教室を出て逃げる時間は多くなったけど、廊下でも刺さる視線は鋭くて、

逃げ場のない学校で、私はこれまで以上に心を殺して過ごすようになっていた。


「…そろそろ、戻らないと…」


お気に入りの中庭で時間を潰し、重い腰を持ち上げて教室へと戻る。

中から聞こえる賑やかな笑い声が、酷く悪いものに聞こえて、私は耳を塞いだ。


「ちょっとー、それはやめなよー!」

「だってそうしてあげた方がさ、皇輝も喜ぶじゃん?」


何をしているかは分からないけど、思った通り、私と皇輝のことで盛り上がっているクラス内。

当然そんな中に入っていくことは出来なくて、私は涙をこらえてしゃがみこんだ。