「いやだって、生まれる前から探していたんだよ。そんな気がするんだ」


教室に入った瞬間に聞こえてくる

聞きなれてしまった大きな声に、私はさーっと青ざめる。


昨日の放課後の出来事が、なぜこんなにも噂になっているのか。

玄関で感じた違和感は、全て皇輝本人の仕業だと一瞬で察する。


「あっはは、お前それまじで言ってんの!?新しい口説き文句だな!」

「やっぱ、自称前世王子は違うな?」

「さすがに、皆に優しい仲村でも引くよなー?」

「あ、仲村来てんじゃん!」


盛り上がっている男子たちの注目の視線が集まって、私は顔を真っ赤にして固まった。


「お、妃花おはよう」


この騒ぎの張本人である彼は、全く何も気にしない様子で堂々と挨拶をしてきて。

その反応を試されるように、集まる居心地の悪い視線の中、私は小さな声で挨拶を返した。


「…おはよ」

「ひゅーっ!!」

「なんだよなんだよ、可愛いなーお前ら!」


ただ挨拶をしただけなのに、待ってましたと言わんばかりに騒ぐクラス。


あーどうして…

私はただ静かに大人しく、毎日を過ごしていたいだけなのに。

こんなに注目されるはずじゃなかったのに…。


いつもに増して、息が苦しい。

自分の席についてからも、教室のざわめきとちらほらと感じる視線に背中を緊張させ小さく俯くと、

私の気持ちを察するクラスメイトが慰めるように肩に優しく触れた。