「い、いいえ、怖くないです。大丈夫」
「儂に敬語は不要ですわい。儂には男孫しかいませんので、気軽にじいじ、と」
「レインを先に孫と呼びたい先代公爵に言いつけるぞ」
「あんなひょろながで儂にかなうはずありますまい」

 かっかっか、と笑うダンは、確かに鍛えられた体をしていた。ユリウスは細身なので、それと比べると腰が曲がっていても大男に見える。
 庭師ってすごい、と思いながら、レインはおずおずと口を開いた。

「だ、ダリア……」
「ほう」
「と、タンポポ……」

 最後は小さくなってしまった。しかし、そんなレインの声を聞いていたのだろう。
 嬉しそうに目を細めたダンは、うんうんと頷いて「お任せください!」と胸を叩いた。

「おひいさまの好きなお花ですからね、儂にお任せください! どこよりも美しく咲かせて見せましょうとも!」

 ダンは、タンポポという雑草を好きだと言ったレインをさげすまなかった。驚きもしなかった。

 まるでそうあることが当たり前みたいに、レインの好き、を受け入れてくれた。