庭師のダンは、温室にいた。
ダンは腰の曲がった老人で、気難しい顔をして薔薇の前で何かをしている。
少し恐ろしい表情に、レインが委縮したのがわかったのだろう。
ユリウスが背を撫でてくれたので、レインは「そうだわ、ひとを見た目で判断してはいけないんだわ」と思って、しゃんと立ちなおした。
だって、レインだって、この赤い目で嫌だと思われたら悲しいから。
「ダン、ちょっといいか?」
「なんですかい、ユリウス坊ちゃん」
「坊ちゃんはやめてくれ……。紹介するよ、アンダーサン公爵家の姫君、レインだ」
「レイン……?」
訝し気に振り返った老人――ダンは、レインをみとめておや、という顔をした。
「姫君、ですかい。坊ちゃんがそう呼ぶのを、儂はひとりしか知りませんが……」
ダンはまじまじとレインの頭の上からつま先までを見た。そうすると、ユリウスが不機嫌そうに腕を組む。