「……あれは?」

 ふっと、花壇に咲いた大きな花が気になって声をあげた。ユリウスが、レインの隣で足を止める。

「あれ……ああ、ダリアか。これはダリアという花だよ」
「だりあ。こんなにすごいお花、見たことないです。……花びらがいっぱいのところが、タンポポみたい。……もし、もし増やすなら、このお花がいいです。タンポポに似てるし、公爵家には、きっと……」
「好きなものを植えていいと言ったのに。でも、そうか。レインは僕らのことを考えてくれるんだね……」

 ユリウスは少し考えていった。

「公爵家の庭師は腕がいい。庭師のダンに言えば、きっと、ダリアも、タンポポも、綺麗に植えてくれる。この庭を管理している彼は、腕がいいんだ」
「……一緒に言ってくれますか?」
「もちろん」

 レインがおずおずと尋ねると、ユリウスはにこりと笑って返してくれる。
 その顔があんまりやさしくて、レインはそっと胸を押さえた。どきどきする、と思った。

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