「もうすぐレインの立太子だ。その時に不穏な出来事は避けたい。それに、レインの心優しい希望もあって減刑させてもらった」
「な……! 殺せよ! 今さら、どうやって生きろって……」

 ユリウスは射殺すようなまなざしでオリバーを見つめた。オリバーの目がおびえたように縮こまる。

「私は許可したよ。お前のしたことは許せないが、だからこそ、これが一番の罰になるとね。……一生、レインの治める地を見て、嫉妬に身を焦がして生きろ。オリバー」
「あ、あああああ……!」

 オリバーの慟哭が響く。その目にはもはやユリウスなど映ってはいなかった。自分の悲しみに酔いしれるオリバーは、けして他者のことを見ない、自己愛の強い男だった。これは、だから迎えた結末だった。

「哀れな男だよ、お前は……」

 床に崩れ落ち、こぶしで床を殴りつけるオリバーを悲しいまなざしで見やって、ユリウスは踵を返した。
 薄暗く、湿った空気が充満している。ユリウスは、きっと、だからこんなにも息が苦しいのだと思った。