「しょうがないじゃないか。邪魔だったんだから。俺が王になるにはいらなかった」
「見張りの兵士は剣で、協力者であるエウルア家の使用人は過剰な薬物投与で。いったい何が前をそこまで駆り立てたんだ」
「王になりたかったからに決まってる。俺は第一王子だ。イリスレインさえ現れなければ順当に王になっていた」

 オリバーは髪をかきあげ、ユリウスと同じ、琥珀色の目をゆがませて哄笑する。

「ヘンリエッタは便利だったぜぇ? その義理の母親もな。なぜか俺に最初から友好的で、スチル? がなんだのとおかしなことを言う以外は扱いやすかった……」

「スチル」おそらく、ヘンリエッタの証言にあった異世界の娯楽の用語だろう。

「イリスレインと婚約して、思いっきり振ってやったときのあの表情は見ものだった……! すぐにお前が助けにこなければ、ゆっくり見られたのにな……あ?」

 オリバーの言葉が一瞬、止まる。
 ユリウスの表情を見て、びくりと体を揺らした。
 ユリウスは唇に笑みをはいて、オリバーをじいっと見つめる。

「な、なんだよ……どうせ、お俺は死刑に……今さら怖いものなんて……」
「言い忘れたが」

 ユリウスは静かに言った。

「お前は死なない。一生、辺境の砦で幽閉と決まった」
「……は?」

 さあっとオリバーの顔が白くなる。紙のようになったその顔に微笑して、ユリウスは続けた。