レインは眉尻を下げた。そんなレインに、ユリウスも困ったような顔をする。
そんな空気を破ったのは、今まさに話題になっていたヘンリエッタだった。
「大丈夫よ。……いいえ、大丈夫です。レイン様」
ヘンリエッタは笑って言った。どこか、つきものが落ちたような顔をして。
「私だって悪いことをしました。オリバー様に協力して、レイン様を陥れようとしてほかにも、たくさん……それは、本当のことだから、きちんと罪を償います。そうしないと、おかあさんに会えない」
「ヘンリエッタ、あなたの、本当のお母様は、今どこに?」
「私の故郷の村にいるはずです。毎年、生きてる証拠として髪だけ渡されていました。……レイン様」
「ええ、助けるわ。必ず。あなたのお母様を」
「……ありがとうございます」
ヘンリエッタは涙声で言った。
頭を下げて、おとなしく馬車に乗り込む。