アレンをぎゅっと抱きしめ、片手でサファイアを落とし続ける。
月明かりすら満足に入らない暗い馬車の中では、外の様子なんてわかりもしない。
どれだけ移動したのかも、わからない。遠くまで来たのかもしれない。
それでも、レインは信じていた。
ユリウスを――ユリウスが、このビーズという道しるべに気付いてくれることを信じる、自分こそを信じていた。
「……不思議ね、奴隷だった時、ずっと死にたいと思っていた私が、今、こんなにも生きたいと思っているなんて」
今の方が、ずっと絶望的な状況で、他者の暴力で死ぬかもしれないことは同じなのに、レインは今、絶対に生きるのだという意思を持っている。
――だって、あなたにもう一度、会いたいから。