「わかり、ました」
「いい子だ」

 レインは男たちに囲まれたまま、急きたてられるように歩き始めた。突き飛ばされた肩が痛い。あざになっているかもしれない。

 アレンと二人きりで見た目だけ取り繕った古い馬車にのせられる。当然、クッションなどあるわけがない。どこかに運ばれていく中で、がたん、ごとん、と音が鳴り、そのたびに車体が大きく揺れる。

 そうやって揺れる馬車で舌を噛まないようにしながら、レインは大丈夫ですからね、と幼いアレンをあやした。
 アレンはレインにしがみつき、ひっく、ひっくとしゃくりあげるばかりだった。

 殴られたあざが痛むのだろう。それから半刻もしないうちに気を失うまで、アレンは静かに泣いていた。
 声を出すなと殴られたのだろうか、だとしたら、三歳の幼い子供に、なんてひどいことをするのだろう。

 このままでは――そう、このままでは、レインたちはまもなく殺されてしまうかもしれない。かつて婚約者だったオリバーがそんな残酷なことをするとは思いたくないが、男たちの言っていることはおそらく本当だ。