無言のレインを気にすることなく、男は続ける。

「オメーなんかに選択肢はネェんだよ。おとなしくついてこれば、このガキを今すぐ八つ裂きにするのはやめておいてやる」

「……わかりました」
「おねえたま……」
「大丈夫ですよ、アレン王子。……ついて行きます。だから、アレン王子の首の縄を外してください」
「おお怖い、おらよ」

 レインがぎゅっと睨むように言うと、男が縄の端を投げてよこした。
 それを手に取り、レインはアレンの首がこれ以上痛みを覚えることのないようにそっと首の縄をほどいた。

「痛くはないですか? アレン王子」
「ン……」
「よかった」

 健気にもそう言って涙をこらえるアレンが痛々しい。
 アレンを抱き上げたレインは周囲を見渡して息を吸い込んだ。――そうして。

「大声をあげたり、逃げようとしたりしたら、その時点で第二王子を殺すぜ?」

 男のひとりの耳打ちするような言葉に、レインはひゅ、と息を呑んだ。
 アレンをしっかりと抱きなおし、ぐうと目に力を込めて、男たちを睨み据える。そうしないと、足が震えて立っていることもできそうになかった。