男の言葉に、レインは赤い目を見開いた。レインが女王になることを歓迎していない人間に、ひとりだけ心当たりがあった。

「オリバー、第一王子……」
「オリバー王太子殿下、だろ、このクソ女」
「きゃっ……!」

 思い切り突き飛ばされて、レインはその場に倒れ込んだ。アレンが「おねえたまにひどいことしないで!」と声をあげる。
 アレンはぼろぼろと涙を流していて、殴られたのか、顔や手にところどころあざがあった。

「なんて、ひどい……」
「次期女王とやらには護衛がゴロゴロついてるが、プライベートな場所は気を遣われてるとかで警備が少ネエ。もともと護衛の少ない第二王子を遣えばすぐにこんなところまで来れちまう」

 ぎゃはは!とそば仕えを装った男は下品な笑い声をあげた。

「……それで、私にどうしろと言うのです」
「言うのです? ハハ! お高く留まっちまって、奴隷上がりが高潔だねえ!」
「……」