アレンは思い切り縄を引かれ、苦し気な表情を浮かべている。
 急きたてられるようにして、アレンがレインのもとへ歩いてくる。腕ばかり前にやって、それで首を引いて。そのさまは、 まるでアレンを盾にするかのようだった。

「あなたたち――何をしているの!」

 レインはアレンに駆け寄った。けれど、アレンへと伸ばそうとした手は、そば仕えの男のひとりに捕らえられた。
 アレンの首の縄を引いている男がくっと歯を見せて笑う。

「何を……」
「イリスレイン王女殿下、アレン第二王子を害されたくなければ、我々にご同行を」

 第二王子、というところをことさらに強調して、嫌味たらしく口にするそば仕えの男たちは、ついで、掴まれて赤くなったレインの腕を見てげらげらとあざけるように笑った。

「こんな細っこい腕であんな大口叩いたんですよねえ!」
「……あなたたちは、誰の差し金ですか」

 パーティ―でのことを言っているのだ、とすぐに分かった。レインは男たちを見据えて静かに返す。

「私が目的なら、私だけを狙えばいいでしょう。……アレン王子を巻き込んで、こんなふうに苦しめている理由はなんですか」
「なんですか、だとよ! こんな状況なのに、お上品だねえ!」
「……」
「おお、怖い怖い。決まってんだろ? わからないか? お前に女王になられたら困るお人だよ!」