ユリウスの眉がいたましげに顰められ、ユリウスの指がそっとレインの目元を撫でる。
 レインはそれだけで痛みが引いてしまって、それがおかしくてふふ、と笑った。

「レイン?」
「大丈夫です、ユリウス」

 大きなターン。レインは華やかに笑って、ユリウスの腕に自分の身をゆだねた。

「あなたがそうして触れてくださるだけで、もうすっかり良くなりました」

 目を瞬くユリウスを見上げると、ユリウスの目にやわらかな光がともった。

「そうか。……でも、無理はしないでおくれ、私のレイン」
「はい、私のユリウス……」

 曲の最後、ユリウスが両手でレインを持ちあげ、くるくると回る。幸せそうに笑いあう二人に「世継ぎの心配はなさそうだな」なんて、貴族たちが笑っていたのを、レインたちは後で聞いた。
 夜が深くなる。澄み切った夜の空に、星々が瞬いていた。