国王の言葉に、場の誰もが口を閉ざし、頭を下げた。アンダーサン前公爵が微笑んでやり遂げた弟をねぎらっている。

「それでは、パーティーを開始する、みなのもの、よく食べ、よく踊り、よく楽しんでくれ」

 国王は、王位を一時だけアンダーサン前公爵に譲位することを説明すると、パーティーの開催を宣言した。譲位の話になったともざわついたが、レインの時ほどではなく、話は進んでいった。
 そうして、国王の宣言と同時に、最初の曲が流れ始める。

 レインはユリウスの袖をくん、と引いた。

「踊りましょう、ユリウス!」
「ああ、レイン。君の、望むままに」

 飛び込んだ大広間の中心で、ユリウスと互いにお辞儀をする。
 そうして手を取りあって、くるくると踊る。
 レインの白いドレスに縫い付けられた小さな真珠がきらきらと輝き、結い上げた髪のティアラと相まって、まるでレイン自体が宝石のようだった。

「レイン、目は大丈夫か」

 ユリウスのリードは巧みで、その手に体をゆだねているだけで、自分が踊りの名手になったと思うほど。そうやってくるくると回ると、顔があったとき、ふいにユリウスに尋ねられた。
 正直に言えば、まだ少しだけひりひりする。でも、あの時はあれが最善だと思ったから、ユリウスにも内緒で、陽光石を用意してくれたベルにも内緒でああしたのだ。