日が落ちて幾分か経つ、大広間の控室。
 今日はレインの王女としてのお披露目のパーティーだ。
 レインはデビュタントの令嬢が迷うような純白のドレスに身を包み、ネーム・コールマンに自分の名前が呼ばれるのを待っていた。

 レインの首元を飾るのは雫をかたどったサファイアが連なったネックレス。イヤリングとそろいのデザインのそれは、つい先だってユリウスから贈られたものだ。

 レインは公爵令嬢としてのデビューはしていたが、それとはまた規模も空気も違ったパーティーに緊張してしまう。
 なにせ、今夜のパーティーは誘拐され、死んだと思われていた先代女王の唯一の姫のお披露目である。それが、いま最も権勢を誇っているアンダーサン公爵令嬢として生きていた、と明かされたのだから、人々がレインに――イリスレインに抱く興味は生半可なものではない。

 大広間へ続く扉の向こうから人々のさざめきが聞こえてくるようで、レインは知らず、緊張で高鳴る胸をそっと押さえた。

「レイン、大丈夫だよ」