「きっと、あれはお母様と、お父様……ふたりとも、私をいつくしんでくださった」

 他人行儀でないいい方は、すぐに舌になじんだ。愛おしくてたまらない二人なのに、もうこの世にいないことがひどく悲しかった。

「私は、お二人のためにも、女王になった方がいいんでしょうか」
「そんなことはない」

 ユリウスはきっぱりと言った。

「お二人は、そんなことは望まない。レイン、君が義務感で女王という重責を背負う必要はないんだ。……レイン、君は、特殊な状況で育って、そのために選択肢が多くある」

 ユリウスの大きな手のひらが、レインの背を優しくなでる。何よりも安心できるぬくもりに、レインはまた一粒、赤い目じりから涙をこぼした。

「大切なのは、君がどうすべきか、ではない。女王になりたいかどうかだ。君が選び取ることに意味がある。大丈夫、レイン。君が向いている方向は、ちゃんと前だよ」
「私が、向いている方向が前……」