「ユリウスを、攻略しないと……」

 ヘンリエッタは必死で考えた。今までずっと母の言うとおりにしてきたから、うまく考えがまとまらない。その時だった。
 ヘンリエッタたちが閉じ込められている場所へ、オリバーがやってきたのは。

「恋人に一目だけでも会いたい、と言って、連れてきてもらったんだ」

 幽閉されているはずのオリバーが会いに来たのが不思議だったが、そういうことなら納得だった。

「オリバー様、ありがとう」

 鉄錆の臭いがして、ヘンリエッタは顔をしかめた。オリバーはごめんごめん、と言って、なにかでべっとり濡れた剣を鞘にしまった。
 オリバーはほほ笑んで言った。

「かわいいヘンリエッタ。愛しているよ。愛しているから、君のやりたいことを手伝おう。そのために来たんだ。そう、例えば、イリスレインを殺す、とか」