――私はこの世界のヒロイン。

 皆がヘンリエッタを好きになる。と母は言った。
 事実、そうだった。学園に入学して、母の言うとおりに行動したら、王子も側近もみんなころっとヘンリエッタにほれ込んだ。

 悪役令嬢が母の「推し」であるユリウスの妹として出て来たのは不思議だったが、母のいう「ゲームの修正力」のことだろうと納得した。

 ……でも、最後はうまくいかなかった。

 ヘンリエッタは王女を陥れた罪で、母は王女誘拐の手引きをした罪で、貴族用の牢へ投獄された。母は今臥せっている。

 母はどうしてこんなことになったの、と泣いている。あの、少女のような顔で。
 母を元気にするためには、どうしたらいいのだろう。

 ああ、そうだ。ユリウスは母の「推し」だ。ハーレムエンドは無理だったけれど、ユリウスを手にいれれば、母はきっと元気になる。