母はヘンリエッタによく異世界の話をしてくれた。
 ヘンリエッタが特に好きだったのは、母が異世界で好きだった「乙女ゲーム」というものの話だ。

 その「乙女ゲーム」の中で、「ヒロイン」はいつも素敵な「攻略対象」と結ばれて幸せになるのだという。何度も「乙女ゲーム」の話をねだるヘンリエッタに、母は言った。

「あなたも『乙女ゲーム』の『ヒロイン』なのよ」と。嬉しそうに「私はヒロインの義理の母親だけど、あなたをいじめたりしないわ」と言った。

 ヘンリエッタが「ヒロイン」である乙女ゲームは「私の陽光」というタイトルのゲームだ。
 義理の母に疎まれるつらい幼少期を過ごしたヒロインは、王立の学園に入って自分を照らしてくれるおひさまのような「攻略対象」と出会い、さまざまな経験を得て成長する。やがて攻略対象の心の傷を癒したヒロインは、自分こそが攻略対象にとっての光となって、幸せな結末を迎える、という物語。

「私のイチオシはユリウス様ルートね! 眼鏡イケメンって最高! でも、やっぱりヘンリエッタにはハーレムルートを進んでほしいわ! 全員分のスチルが見られるんですもの!」