「今この時を持って、お前を王族から排籍する。そして、後ほど公式に発表するが、私はこの責任をとり、王位を退く。次の王は、王位継承権第二位の前アンダーサン公爵だ。……隠居したのに頼むのは、申し訳ないと思うがね」

 国王がユリウスを見上げると、ユリウスは静かに礼をとって言った。

「いえ、父も、弟君である国王陛下のお役に立てて喜ぶと思います」
「ふふ、兄上はいつでも私のことを慮ってくださるからな……」

 国王が何かを思い出すようにして目を細める。

「そ、んな、父上! 父上! 俺が王でしょう!? 俺は国王になれないのですか!」
「……オリバー、パーティ―のあと、お前を立太子する気でいたのだ。だから私もここに来ていた。イリスレインを隠そうとしたのは、その立太子を危ぶんでか?」

 オリバーの言葉に、国王は声を硬くした。

 オリバーに振り返ったから、レインには背中しか見えない。けれど、それがレインには、ひどく小さく見えた。

「悲しいよ、オリバー。私は、お前を王にしようと思っていたのに」