涙声になって、国王の唇から嗚咽が漏れる。ユリウスから、国王は穏やかな人だと聞いていた。きっと、だからこそ、心が疲れてしまったのだろう。王というものは、大変な仕事だから。

「陛下……」
「父上! そいつはきっと偽物です!」

 レインが労わるように国王に声をかけると、オリバーがいきり立って叫ぶ。
 けれど、国王は取り合わなかった。

「黙りなさい。……私をもう、父と呼ぶことは許さん。オリバー。ここまでの騒ぎ、そのきっかけを作っただけでは飽き足らず、公式記録の改ざんをしてまで保身をしようとしたことは王族として許されない」

 落ちくぼんだ目、やつれた面差し、こけた頬。そのどれもが国王の心労を表しているにもかかわらず、その声に込められた怒りは本物だった。国王は、厳しい声でオリバーに告げる。