急に水を向けられ、オリバーが目を見開く。けれど、その顔には脂汗がにじんでいた。

「オリバー第一王子、あなたは王女が誘拐された十五年前の使用人名簿を改ざんしましたね。あなたがその名簿を閲覧した記録が残っています。そして改ざんされる前の記録は使用人に燃やすように命じた」

「な……んでそれを。……いや、俺はそんなこと……」
「使用人というものは、全員が全員、絶対的に主人に忠実というわけではないのですよ。かつて王女を攫った侍女のように。この使用人も、いつかあなたに取引を持ち掛けられるよう、この名簿を残していた」

 言って、ユリウスは手にしていた古い紙を広げた。たった数枚の紙は、しかしはっきりと王家の刻印がなされている。ユリウスがオリバーを、そして、コックス子爵夫人を睨み据えた。