「ほのん。おはよ。……昨日はごめんなー~」
「えっ」
朝イチ顔を合わせた彼方は,鞄を置くよりも先に私へそんな言葉を向ける。
どれの事かと驚いた私は,すっとんきょうな声を上げた。
ほのんと言うのは穂乃果から来ている私のあだ名。
女友達だけが使っていたものを,彼方がノリでそのまま使い始めたのがきっかけだった。
「いや,かなり応援してくれてたからさ。昨日も帰り,放心してただろ?」
彼方の言葉で理解する。
唐突に別れたと聞かされた時の話。
覚えていない空白の時間で,私は放心していたのだと知った。
罪悪感に胸がざわざわと音を立てる。
応援なんて,私は1度もしたことない。
別れ話と同じように突然聞かされて,すごくショックで,本当はすぐにでも泣きつきたくて。
そんな中で,初カノだとか,告白を受けただとか。
友達として,当たり前に,喜んだり囃し立てたりしていただけだ。
今聞かされるまで,記憶にもない取り繕いで嘘だらけの言葉だった。
だから私はまた困る。
返す言葉が見つからない。