四葉がそう言うと、圭吾は「勉強じゃないんだ」と消えてしまいそうなほど小さな声で言う。四葉が顔を上げると、圭吾の顔は耳まで赤くなっていた。

「少しだけ、見る？」

圭吾がそう言い、ノートを四葉の方に軽く押す。四葉は「じゃあ少しだけ」と言い、ページを捲った。勉強ではないなら、このノートには何が書かれているのか。

『この世界にいない君へ』

そう書かれた下には、人物名や設定などが書き込まれている。その下にはプロットが書かれていた。すぐに四葉は気付く。

「これって、東郷くんの書く小説の設定？」

圭吾は恥ずかしそうに何度も頷く。四葉はもう一度じっくりとプロットなどに目を通した。同じクラスメートが書いたとは思えないほど、精巧に作られた小説だ。少し目を通しただけで胸の中にわくわくする気持ちが押し寄せてくる。

「普段は書いた小説、コンテストに応募するか同じ文芸部の人にしか見せないから、なんだか恥ずかしいな……」

「えっ、コンテストに応募してるの！？」