「東郷くんすごいよ!こんな小説書けちゃうなんて!小説家になれると思う」

「本当?そう言ってくれると嬉しいよ。いつか、色んな人の心に残るような小説家になるのが夢なんだ」

四葉の言葉に照れ臭そうに圭吾は笑う。圭吾はどこか輝いて見えた。まだ将来何をしたいかわからない四葉にとって、自分の夢を持ち、その夢に向かって努力している圭吾は違う世界の人に見えたのだ。それでも、想いは止められない。

やがて、三年生になり四葉は圭吾とまた同じクラスになった。一年前は何とも思わなかったのだが、圭吾に恋をしていると話は別だ。嬉しくてその場で飛び跳ねてしまいたくなるのを堪える。

三年生になってからも、二人の距離は同じままだった。四葉は恋愛漫画のようなアプローチをすることはできず、圭吾も接し方は変わらなかった。ただ、想いが膨らんでいく。

三年生になると卒業後の進路を考えなくてはならない。四葉も圭吾も大学受験に向けての勉強で忙しくなり、本もそれほど読めなくなった。しかし、勉強の息抜きに二人で好きな本の話をすることは四葉の心の支えになっていた。