(これが、人を好きになるって気持ちなんだ……)

ストンと胸に今四葉が抱いている感情の名前が落ちてくる。恋愛ドラマを友達との話題のために見ることはあったものの、誰かに想いを抱くことは初めてだった。

(こんな甘酸っぱい気持ちなんだ)

高校二年生の冬、四葉は初めての恋を知った。



好きという気持ちを自覚してから、四葉の世界はガラリと変わった。

挨拶を交わしただけで胸が高鳴り、圭吾と話すと幸せが込み上げてくる。読書がさらに好きになり、圭吾が読んでいなさそうな本を読み、「おすすめ!」と紹介することが増えた。

「これ、よかったら読んでくれないかな?」

圭吾が自分の書いた小説を持ってくる。どこか恥ずかしそうにする圭吾に胸を高鳴らせつつ、四葉は「もちろん!」と笑顔で小説を受け取り、読み始めた。

今回圭吾が書いたのは、心から愛し結婚した妻が殺害され、その理由が何者かによる復讐であった。そして妻の裏の顔を夫が知っていくというミステリーである。