コンテストで大賞を受賞すれば、小説家という肩書きを手に入れることができる。小説家になりたい人たちが必死で応募する企画だ。

「すごいなぁ……。同じクラスメートとは思えないよ」

「いや、僕はまだまだだよ。賞を取ったことないんだ」

「えっ!?こんなに面白いのに!?」

「そう言ってくれると救われる」

審査員はどんな目をしているのか、と四葉は心の底から疑問に思った。圭吾の小説は間違いなく面白い。何が足りないと言うのだろうか。四葉がそんなことを思っていると、ポツリと圭吾が「バレンタイン」と言う。

「コンテストってバレンタインに似てると思うんだ。審査員、そしてその先で待っている読者の人に想いを小説という形で伝える。受賞するのは想いが伝わった証なんだよ」

圭吾の顔を見た四葉の顔に、赤が広がる。傾き始めた夕日に照らされた彼の顔はどこか儚く、今にも消えてしまいそうだった。しかし、驚いてしまうほど美しい。鼓動が痛みを訴えるほど激しく動いていく。