一体誰が、眠っている女子生徒の隣に潜り込むなんてことを……。
鳥肌の立つ腕を撫でながら、呑気に寝息を立てて眠る男の人に近付く。
制服を着ているところを見るに、どうやら花柳学園の生徒ではあるようだけれど……と顔を覗き込み、おもわず息を呑んだ。
「わぁ、すごく綺麗……」
ついさっきまでの不信感はサッと掻き消え、驚きと感嘆が湧き上がった。
癖のない艶やかな黒髪。瞳が伏せられていることで、より一層強調される長い睫毛。そして何より、人形のように整った綺麗な顔。
小さな赤いピアスが黒髪に映えて、高校生とは思えない妖艶な雰囲気を醸し出している。
見たこともないあまりの美貌に見惚れていたけれど、しばらくしてハッと我に返った。
「そうだ、はやくここを出ないと……!」
ぽけっとしている場合じゃない。部屋の主であろうこの男子生徒が目覚める前に、早いところここから逃げないと。
勝手に人のソファで寝てしまうなんて、ただでさえ厳しい特待生の評価に傷がついてしまうかもしれない。下手をして罰を受けるなんてことになったら……。
「っ、だめだめ!この学校は絶対やめられないんだから……!」
ぶんぶんっと首を振り、今度こそ慌ただしく部屋を出る。