ここだけ、学校と切り離された異界のような雰囲気がある。本能的に、早くここから離れなきゃと嫌な予感を察した。

けれどその直前、部屋の中に見えたあるものが原因で、踵を返す足がピタッと止まってしまった。


「あ、あれって、ソファ……!?」


瞳がキラキラと輝く。視線の先にあるのは、座り心地のよさそうなもふもふとしたソファだ。

もふもふで、ふかふかで……きっと極上の座り心地だろうあのソファは……。


「って、だめだめ!絶対だめに決まってる!」


一瞬浮かんだいけない考えを、慌ててぶんぶんっと振り払う。

そうだよ、だめに決まってる。いくら周りに人の気配がしないからって、ちょっとくらいはバレないだろうと思ったって。

きっと誰かの所有物であろうソファに、勝手に寝っ転がろうと思うなんて!


「で、でも、ちょっとくらいなら……頭も痛いし、このままじゃ教室に戻れないし……」


ぶつぶつ、と零れる呟きは言い訳じみたものばかり。

でもだって、本当に頭はまだ痛いわけだし。眩暈も軽く続いているし。何より最近、まったく寝てなかったし。

ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ、寝っ転がるくらいなら……。