「はやく戻らなきゃ」


これ以上迷わないうちに、はやく教室へ向かわないと。

そう思い、焦りながら踵を返した瞬間だった。急にくらりと眩暈がして、その場にしゃがみこんでしまった。


「頭が痛い……疲れてるのかな」


瞼を抑えてぽつりと呟く。

そういえば最近は夜中まで勉強をしていたから寝る暇がなかった。徹夜せずに眠った日でも、ほんの三時間くらいしか眠れなかったし……。

睡眠不足のせいで、身体が疲れているみたいだ。


「どうしよう……教室まで、ちゃんと戻れるかな……」


壁に寄りかかりながらなんとか立ち上がる。

ふらつく身体で歩き出そうとした時、ふと視界の端にわずかに開いた扉が見えて立ち止まった。


「……?あそこ、なんだろう」


よろめきながらも足を進め、気になる扉の前に向かう。

ほんの少しだけ開いた扉の隙間から、部屋の中をそろりと覗き込んだ。


「教室、じゃない?」


部屋の中を覗いて、ハッと息を呑む。

そこは教室の雰囲気とはまったく違う、西洋風の家具が置かれたおしゃれな部屋だった。