正直、私に対する用件というものにも心当たりはありまくりだけれど……あくまで何も気が付いていない体で話を進めよう。

瞳を揺らしながら問うと、彼は案の定な答えをストレートに放った。


「何かって、昨日の件だ。お前、昨日あの部屋に入っただろ。俺の部屋のソファで、呑気に昼寝をしただろ」

「うぐっ……!」


や、やっぱり私だってバレてる……!

バレないわけがなかったけれど、こうして当人に面と向かって言われるとギクッとする。

というか、やっぱりあの部屋はこの男子生徒のものだったのか。学校の教室の一つが丸ごと彼の部屋だなんて……一体彼は何者なのだろうか。

目の前の男子生徒に対して、ますます警戒心が募る。

とはいえとりあえず、昨日の件に関してはもう言い逃れできないので、大人しく謝罪することにした。


「そ、その節は、本当にごめんなさい……あなたの部屋だったなんて知らなくて、その……言い訳にはなるけど、昨日はすごく疲れていて……」


床に指をついて深く頭を下げる。この謝罪に免じてどうか許して、と俯きながら祈っていると、頭上からふと小さな笑い声が聞こえた。


「あぁ、そうか。本当に知らなかったのか。どおりで、肝の据わった女だと思った」


予想していた怒鳴り声とは反対の反応が聞こえたことに驚いて、恐る恐る顔を上げる。