「なっ、なんでっ!?」
ぶんぶんっと辺りを見渡す。
おかしい、ここまで走ってきた時、背後から足音も聞こえなかったし気配もしなかったのに。
一体いつ、どうやってこんな近くまで?あまりの驚きに口をぱくぱく開閉しながら、硬直したまま目の前の彼を凝視した。
「どうした。具合でも悪いのか」
うるさいくらいのリアクションを見せる私とは異なり、彼は至って冷静な様子できょとんと瞬くだけ。
私が固まっている理由なんて、これっぽっちも理解していないみたいだ。
「いや、どうしたって……え、いつの間に追ってきてたの……?」
「……?お前が突然走り出すから、驚いて咄嗟に追いかけただけだが」
いや、そんな不思議そうにぱちくりされても。
ぱちくり瞬きたいのも、きょとんと首を傾げたいのも私の方だ。噛み合わないこの様子を見る限り、どうやら彼は人の感情に敏感なタイプではないらしい。
「えっと、うーん、まぁいっか……よくないけど。あの、私になにか用ですか……?」
まぁいっか、なんて納得出来ることは何もないけれど。
とりあえず、これ以上話を伸ばしても意味がない。そう悟り、ムリやり話題を変えることに。