「はぁ。本当にどうしよう」


教室に近付くにつれ、向けられる視線にもいつも通り慣れていく。

ため息を吐きながら昨日の失態を思い返して進んでいると、ふと前方から生徒たちのざわめきが聞こえてきた。


「……?なんだろう、何かあったのかな」


また悪目立ちでもしているのかな、と一瞬不安になったけれど、ざわめきの中心にいるのは私じゃないみたい。

というより、聞こえるざわめきのほとんどは、女子生徒の黄色い悲鳴だ。いつも私に向けられるものとは毛色がまったく違う。

ほっとしながら、それじゃあ一体何が?と俯いていた顔を上げる。

視線の先に見えたのは、まさにたった今入ろうとしていた教室の入り口、そこを塞ぐ一人の男子生徒だった。


「……えぇっと」


ピタッと立ち止まり、困惑してぱちくりと瞬く。

ど、どうしよう。この人が入り口を塞いでいるせいで中に入れない。


「あの。そこ、通ってもいいですか」


おどおどと話しかけてしまった後、あっと思い立った。

しまった、反対の入り口に回ればいいだけの話だったのに。朝から考えすぎて頭が回っていないからか、そんなことにすら気付くのが遅れるなんて。


「……あ?」