「誰々?彼氏ー?」
楽しそうに騒ぐ彼らの声にかき消されながらも、私は柳の名前を口にした。
途端に彼らの表情が凍りついたように固まり、どんどん青ざめて行く。
「えっ!?葉月ちゃん!?なんでここに」
通りがかった1人が足を止め、大きな声で私の名前を呼んだ。
由井くんだ。
先ほど私を囲んでいた男の子たちが一斉に由井くんに向きを変え、勢いよく頭を下げる。
「「由井さん!お疲れ様です!」」
揃った大きな声に、びくりと肩が跳ねた。
彼らはぞろぞろと、由井くんの後ろに下がる。
「何しにきたの?」
「ちょっと柳に用があって…、忘れ物を、届けに…」
「なるほど、それで一人で来て。絡まれてたわけだ」
「いや…絡まれてたというか…」
言葉を濁した私に、由井くんがにししと楽しそうに笑った。
そして後ろにいる先ほど話しかけた人たちに向かって「お前らが絡んでたの、柳の彼女だぞ」と教えるように言う。
「すみませんでしたぁっ!」
先程までの態度とは変わって、深々と頭を下げた彼らは私に大きな声で謝罪してきた。
どういうこと?と由井くんをみると、口に手を当てて今にも大笑いしそうなのを堪えている。