教えてもらった定時コースの校舎は、さっき訪れた煉瓦造りの校舎とは大違いだった。



なるほど、さっき私がいた場所は
由緒正しい特進コースの校舎だったのか。



特進コースの巨大な校舎と比べると、定時の校舎は半分にも満たない大きさだった。


煉瓦作りなのは変わらないが、外壁はところどころ剥がれ落ち、下の方は蔦が絡んでいる。



それに、歩き進めて行くうちに増えてゆく、数々の落書き。


スプレー缶などで描かれた大きな文字などが、校舎のあちこちにあった。



荒れている。



一言で表すならそれだ。



校舎の入り口らしき場所に近づいた所で、先ほど見かけた生徒と異なる制服の着方をした阿久津沢 定時コースの生徒たちが私をジロジロ見て絡んできた。



「女の子が1人で何してんの?こんな所で」



天塚の人に絡まれた時みたいな嫌な印象は無いが、見ず知らずの男の子に囲まれるとやはり少し萎縮してしまう。



大丈夫…


彼らも柳の知り合いかもしれない…



心の中で唱えながら、「人を探していまして…」と小さな声で尋ねてみる。