「付き合う…とかそういう話はしてなくて…」
つまり、私たちの今の関係は一体なんだろう。
彼から好きと言葉にされなくても、柳が私のことを大事に思ってくれてるのは十分わかっている。
私はそれだけで充分だ。
「えー、そうなんだ…。まぁ、佐百合らしいといえばそうだけど…」
蘭子さんは困惑した表情を浮かべながら、グラスに水を注いでくれた。
「柳って、今まで彼女とかいたんですか?」
いないわけないか、と思いつつも聞いてみる。
あんなに美しくてかっこいいんだ。
女の子が放っておくわけない。
「それが分からないのよねぇ。佐百合、無口だし自分のこと全然喋んないから。でもすっごいモテてたよ」
「とんでもなくね」と誇張するように蘭子さんは付け足す。
「中学の時に、女子にモテすぎちゃって転校したらしいもんね。まったく、どんな次元の話よ」
「それ、聞きました」
呆れたように笑った蘭子さんが天を仰ぐ。
確かに、モテ過ぎて転校だなんて
空想の話でしかありえない。
けれど、彼の美しさなら納得できてしまうかも。