それに、小さい頃おじいちゃんの家に泊まりに行った時のことを思い出した。



「ここへも、いつでも来ていいのよ」



蘭子さんがにこりと笑う。


そして、目の前に真っ赤で美味しそうなナポリタンが置かれた。


ピーマン、ベーコン、玉ねぎ、粉チーズ。

いい匂いが漂ってくる。



どうぞ、とフォークとスプーンを一緒に渡してくれた蘭子さんは、はぁ…と色っぽいためいきをもらした。



「それに、付き合ってすぐ後にしばらく一緒にいたら、離れる時呆然としちゃうわよねぇ」




付き合って? と、
彼女の口から出たその言葉を私は心の中で復唱した。



それって、私と柳のことを指しているのだろうか。



いや、とりあえずはナポリタン。
いただきますと手を合わせて口に運ぶ。

ほっぺが落ちそうなほど美味しい。



「…柳から、私と付き合ってるって聞いたんですか?」



「…いや?直接聞いたわけじゃないけど…。え、違うの?」




柳とは、キスもした。

肌に触れたくて私から抱きついたこともある。


けれど、私と柳の中で、明確に話し合ったりしていない。



それに、私も柳も、お互いに一言も「好き」などという告白はしていない。