柳がそんな顔することないのに…
彼の頬に触れて、その綺麗な肌を優しく撫でる。
「わかった。…この世で1番美しいあなたにお願いされたら、断れないもん」
からかうように言うと、柳は目を細めて笑った。
ベットに腰掛けている彼の膝の間にいた私の腰を、柳はぎゅっと抱きしめる。
腰を抱かれたまま、柳の頭をふわりと撫でる。
まるで猫の毛みたいに柔らかい。
「よし。じゃあ帰ろう?」
「…やだ、もう少し」
この顔から「やだ」という言葉が出てきて
びっくりしすぎて、私の体が思わず固まる。
体の内側の方から、むずむずとした感情が湧き上がってくる。
愛しさと、可愛いと思う気持ちがぐちゃぐちゃに混ざったみたいな…
普段は冷静で、無口で、淡々としているイメージの彼とは真反対のこの2文字に、どうしようもなくなってしまう。
あのルックスに、甘え上手なこの才能。
もしかしたら神様は、本当に人間へのいろいろな配分を間違えてしまったのかも。
彼1人に偏りすぎだ。
「…柳って、色々ずるいよね」
「なにが」とでも言いたげに、きょとんとした顔でこちらを見上げる彼。
相変わらずその顔面は、嫉妬してしまうほど美しい。
こんなに近くで彼の顔を拝める私も、ひょっとしたら恵まれているのかもしれない。