朝目覚めると一緒に眠ったはずの柳の姿はなく、黒猫のかぼすが私の枕元に丸くなっていた。


顎のところを撫でてあげると、気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らす。




起き上がると、体のあちこちが痛んだ。




「おはよう、よく眠れた?」



かぼすの後を追いながら居間に向かうと、柳のおばあちゃんが朝食の支度をしているところだった。


にっこりと笑って、私を席に案内してくれる。



机の上には、いかにも朝食
といった和食の品々が並んでいた。


すごい、
こんな食事、いつぶりだろう…


いつもはコンビニのご飯か、自分で作った簡単なものしか食べない。



2種類ほどのおかずがおしゃれな小鉢に入れられ、白米とお味噌汁からは湯気がたっている。


おばあちゃんが運んできた焼き魚から香ばしい香りがしてきて、ぐうぅ とお腹が鳴った。



そういえば、昨日の昼から何も食べていない。




「あの…すみません。…色々とありがとうございます」



「葉月ちゃん、ね?
いいのよ。気にしないで。
お客さんなんて久しぶりだから嬉しくて…
さぁ、お食べになって」



腰は曲がっているが、とても上品で明るいおばあちゃんだ。



「あの…やな…ー、佐百合さんは…?」



「シャワーよ。もう来ると思うけれど…」



ちょうどおばあちゃんが立ち上がったところで、柳が居間にやってきて私の向かいに座った。


かぼすがすかさず柳の膝の上に駆け寄る。



まだ乾いていない髪をタオルで拭きながらかぼすを撫でる柳はいつも見る柳の彼とは違っていて妙に大人っぽく見えた。



制服以外を着ている柳を見たのは初めてかもしれない。



陶器みたいな肌を、髪から落ちた雫が滑っていくさまを、ぼうっと眺めてしまう。