「このままだと評価下がっちゃうよ?いいの?下がっても。お父さんに怒られるんじゃない?」



この男は、私と父の関係性を知っている。


なぜならこの塾は、父が入るように勧めたから。


だからきっと、
というかほぼ確実に、私の評価や授業態度などは、この男が父に連絡すれば全て知られてしまうということだ。



それを知った上でコイツは私に話しかけてきている。




「…まぁ、君もそれは嫌だろうから。提案しようとしてるんだよ」




「…………何の話ですか?」



「だから、僕のいうことを聞けば、君のお父さんには連絡しないと言ってるんだ。それに評価ももちろん下げたりしないよ?」




この人、何言ってるの…?



担任は笑いながらジリジリとこちらに近づいてきた。


私は気持ち悪くなって、彼が一歩こちらに近づく度に後ろに後ずさる。



いつもとは雰囲気が違う。



異常なその空気に私は恐怖を感じ取った。




「やめてください…」



声が震えてきてうまく喋れない。


どうすればここから逃げられるか、必死に頭で考える。


なのに、体は言うことを聞かずにどんどん硬直していく。




「大学の推薦とかも、僕が関わってるとこもあるんだよ?知ってた?」




まずい状況なのは分かっている。

なのに身体が震えて足が動かない。




「ね?僕のいうことを聞けば君の全てがうまく行くんだよ…。君はじっとしてるだけでいいから…」



後退りを続けて、ついに私の背中は壁にぶつかってしまった。



コイツ、本気でいってんの?



逃げなきゃ。


今すぐここから…