「いらっしゃい!」
奥から男の子の声が聞こえてくる。
中は思ったより広く、カウンターが6席、そして奥にはテーブル席が3つほど。
カウンターの奥は、一面大きな棚になっていて
沢山のグラスや様々なラベルのお酒が並んでいた。
全体的に黒と白を基調としたインテリアで、薄暗い照明がいかにもBARといった印象だ。
白と黒のブロックチェックの床を数歩進むと、奥からひょっこりと赤髪の男の子が顔を出した。
「すみません、今ちょっとオーナーが出てて……って」
「あ!」と男の子が大きな声で私を指さす。
見覚えのある顔だ。
唇のピアスとツンツンとした赤髪。
この前柳と一緒にいた人だ。
「ニコちゃんマークの!」
緑色のTシャツを着た彼は、私の元へ早足でやってくると私のことをまじまじと見つめてきた。
目が大きくて可愛らしい印象の顔立ちだ。
背は私より少し大きい。
なんだか小型犬みたいだな、と心の中でつぶやいた。
ポメラニアンとか、チワワとか…そんな感じの…
「……どうも」
「うわー、ごめんなさい!今ちょっと俺以外誰もいないんスよ…!……柳さんに用ですよね?」
柳さんに、と言われて
間違っていないのに「いや、まぁ…その…」と口ごもる。