「…わかってる。ちゃんとわかってるから」
お願いだからこれ以上この話を続けないで。
ぎゅっと目を瞑っても、この苦しさからは解放されはしない。
『この前のコンペに出した作品を見たが、何故静物しか描かない?静物は上手ければ誰でも描けるだろう』
「…ごめんなさい」
『何か描きたいものはないのか?お前には』
言葉を返す気にもなれない。
担任に先ほど言われた言葉と、父の言葉が重なる。
私にはきっと何かが足りてない。
努力してもしても埋められない何かが、私にはある。
自分ではわかっていても、どうしたらいいのかわからない。
どうすればいいの?
心臓をどんどん針金で撒かれていくような感覚に陥る。
鳩尾あたりがどんどん重くなっていき、ズキズキと痛み始めた。
どうして。
どうして。
私が何したっていうの。
「…ごめんなさい」
電話の奥で呆れたため息が聞こえてくる。
『まぁ、何かあればマネージャーに連絡するんだ、わかったな』
私が返事をするよりも早く、通話が切れる。
携帯をベットに放り投げて、顔を掌で覆うと、目尻から涙が流れて耳に伝ってゆくのが分かった。
こんなことで泣いてたまるか。
そう思うのに、体は言うことを聞かない。
絵とちゃんと向き合えるように、なるべく考えないようにしてきたのに。
父の声を聞くたびに、胃のあたりが痛くなって
頭の中であの失望した目が浮かんでくる。