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「ねぇ野田」
それからしばらくの事だった。
今日も私は塾に一番乗りし、手を動かしていた時、野田がいつも通り2番目に教室にやってきて、私の隣の席に腰を下ろした。
野田は「んー?」と、こちらを見ずに返事をする。
野田の携帯からはピコピコと可愛らしいゲームの効果音。
彼は相変わらず早くやって来ても、こうしてゲームばかりして私の隣にいる。
「野田の知り合いに阿久津沢高校の人がいるって言ってたよね」
野田は"阿久津沢"という言葉にぴくりと反応し、こちらを向いた。
「うん、いるけど……。何?どしたの?」
彼は私の口からなぜ"阿久津沢"という言葉が出たのか、興味津々という様子だ。
「…白くて、少し長めの髪の生徒知ってるか聞いてみてくれない?」
あれから、あの美しい彼が一体何者なのか気になってしょうがない。
名前も、年も、何もかも全く知らない。
もうすでに二回も家にあげているというのに。
彼がどんな人なのか、もっと知りたい。
欲を言えば、また彼に会いたい。
そしてあの綺麗な顔を近くで見たい。
それに、あの彼といる時の居心地の良さが
私にとっての救いになってきているのも事実。
どうすれば彼に会えるのか、そんなことばかりが私の頭を占めていた。